ZrO_2とAl_2O_3およびTiO_2を積層し複合化することにより、多機能調和型歯科用セラミックスを開発することを目的とし、今年度ではZrO_2バルク体の表面におけるTiO_2のコーティングに関して検討を行った。TiO_2をナノチューブの形態でコーティングすることにより光触媒反応による抗菌性や、表面に超親水性が付与され唾液などの水分の流動性が高くなり清掃性が期待できる。TiO_2のコーティングはTiO_2の微粒子やTiのアルコキシドゾルを無機系あるいはフッ素樹脂などの安定な目的物に塗布し、その後熱処理を行うことによりなされてきた。しかし、TiO_2ナノチューブ(TNT)の場合はその低い熱安定性が故に熱処理による焼付けは困難であると予想される。そこで今回はZrO_2基板に化学的手法によって処理することにより、表面にTNT薄膜の生成を試みた。 3Y-TZP粉末にTiO_2粉末を混合し調整した粉末を大気中で焼成し試料を作製した。10MのNaOH水溶液に試料を加えて、110℃で20時間以上加熱還流した。その後試料を取り出し、数回イオン交換水で洗浄した。次に0.1M塩酸中に10分浸し、再びイオン交換水で数回洗浄しZrO_2基板上にTNTを析出させた。反応終了後に走査型電子顕微鏡を用いて微細構造観察を行った。 ジルコニア基板上にまだ少量ではあるが表面にTNTと見られる繊維状の物質が確認できた。構成層を同定するためにx線回折分析を試みたがZrO_2とTiO_2のピークのみが検出され繊維状物質の相はわからなかった。化学処理することによりジルコニア基板表面にTNTと思われる生成物を作製することに成功した。 また、CVD装置ではジルコニア膜の均一で安定した成膜ができず、条件を算出するのに多大な時間がかかり困難であることを確認した。対応法としてスパッタリング法によりZrO_2およびAl_2O_3薄膜を積層していく。
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