糖尿病網膜症などの虚血性網膜症は、網膜血管閉塞による虚血性血管新生が病態進行に深く関与していることが知られている。虚血性血管新生には血管内皮増殖因子(VEGF)が主に関与しているが、非増殖性糖尿病網膜症患者の硝子体内では、VEGF濃度が高いにもかかわらず血管新生がみられないことがあり、VEGF単独では網膜血管新生を誘導するには不十分であることが考えられ、他の因子の関与が示唆されている。我々は、これまでにオーファンGPCRリガンドとして同定されたapelinが、生理的な網膜血管新生に深く関与していること、VEGF誘発血管新生に対する促進作用を有していることを明らかにしてきた。今回、我々は、apelin遺伝子欠損(apelin-KO)マウスにおける病的な虚血性網膜血管新生の形成について検討し、内因性apelinと虚血性網膜症の関連性について検討した。虚血性網膜症モデルには、汎用されている未熟児網膜症(ROP)モデルを用いた。ROPモデルでは、マウスを75%酸素条件下で生後7日齢(P7)から5日間飼育し、その後正常酸素状態で飼育することで発生する虚血性血管新生を評価した。その結果、ROPモデルでは、P15をピークにapelin mRNA発現が劇的に発現上昇し、P20まで持続していることが明らかとなった。また、ROPモデルにおいて、apelin-KOマウスでは、P17で野生型マウスと比較して有意に網膜血管量が低下していた。これらの結果から、内因性apelinは、糖尿病網膜症などの虚血性網膜症の病態進行に促進的に作用する重要な因子であることが示唆された。
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