研究概要 |
放射線照射の創傷治癒への影響を観察するため、ラット及びマウスに放射線照射を行い、放射線性難治性潰瘍モデルの作製及び脂肪組織由来間質細胞移植の効果について検討を行った。 はじめ背部皮膚を弁上に挙上し、皮弁以外は鉛板で遮蔽し、皮弁のみに照射を行い、放射線照射と同時にデルマパンチで穴をあけ同じ大きさの潰瘍を作製、ここにDilラベルした細胞を移植するという方法を試みた。しかしながらこの方法では皮弁自体が壊死することや、皮弁下にHematomaが生じるなどして、個体間での条件をそろえることが難しかった。このため、マウス両側大腿に放射線を照射し、急性期の炎症が落ち着いた後、同じ大きさの潰瘍を作成、片側のみに細胞移植を行って同一個体の左右で比較するという方法で解析を行うこととした。条件検討の結果、線量は!6Gy,移植時期は照射後1ヶ月、潰瘍の大きさは直径5mm、移植細胞数は1×10^6個とすることとした。 その結果、肉眼的観察で細胞移植した側において創収縮が早く、移植後9-13日で上皮化が終了した。組織学的にも、細胞移植側において創治癒傾向が顕著であり、また創部において細胞ラベルのDiLを確認し、移植細胞の生着を確認した。また、免疫組織染色を行ったところ、細胞移植側ではコントロール側と比べ、TGFβ、VEGF、FGF2、IL-6の発現のピークが早期にあった。また、細胞移植側では、コントロール側と比べ瘢痕形成が少なかった。 安全性などのさらなる検討が必要であるが、本研究により放射線照射により引き起こされる創傷治癒障害に対し、脂肪組織由来間質細胞移植の有用性が示唆された。
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