わが国では訪問看護師により、在宅で介護をして看取り終えた後の遺族に遺族訪問が行われている。遺族が健やかな生活を維持・向上できるような訪問看護師の効果的な役割を検討するため、遺族訪問を受けた遺族がその時の状況をどのように認識し、意味づけを行っているのかという構造を明らかにすることを目的に、調査を行った。平成19年度に得た16名の研究対象者の面接データに、20年度には1名の研究対象者を加えて半構成的面接を行った。対象者に了承を得てMD録音した面接内容を逐語録に起こし、データをコード化・カテゴリー化し、質的帰納的に分析した。 結果、遺族は死別後の訪問看護師による訪問で【故人にまつわる思いの共有】【訪問看護師による故人へのお参り】【訪問看護師から受けたさりげない気づかい】【訪問看護師から受けた生活における困りごとへの支援】【最後の訪問看護から現在までの情況の打ち明け】【感謝の気持ちの伝達】【介護に関するものの処分と清算】という7カテゴリーに整理される状況を認識していた。また、この状況認識から【訪問看護師との人としてのつながりの再確認】【心の安定化】【介護生活への区切り】【これからの生活へ前向きに臨む気持ちの獲得】という4カテゴリーに整理される意味づけを行っていることが見出された。さらに、こうした状況認識や意味づけにいたる前提には【在宅介護を通して形成された訪問看護師とのかけがえのない関係性】があることが明らかとなった。 これらの結果から、死別後の訪問を行う訪問看護師には、生前から家族にとって専門家としても人としても信頼される関係が築かれていることを前提として、遺族の心の整理を促し、新たな生活への移行を支援する役割があると考えられた。
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