研究概要 |
心臓は,虚血になった後血流を再開しても,虚血により生じた心筋梗塞巣はさらに拡大する(再灌流障害)。心臓再灌流障害には活性酸素が関与することが知られている。しかし,心臓再灌流障害における活性酸素生成源は未だに特定されていない。最近,心臓チトクロムP450が活性酸素を生成すること,摘出心臓を用いた実験系にいて,チトクロムP450阻害剤が再灌流障害を抑制することが示された。しかし,上記の知見はすべてin vitro実験系により得られたものである。本研究は,in vivo心筋梗塞モデルラットを使用し,以下の2点を明らかにすることを目的とする。(1)チトクロムP450が心臓再灌流障害における活性酸素生成源であること,(2)チトクロムP450阻害剤処置により,再灌流障害における心機能の悪化が軽減すること。 1.心筋梗塞モデルラットの作製 ラット冠状動左前下行枝を1時間結紮後,血流を再開する心筋梗塞モデルラットの作製法を確立した。左心室における虚血領域は50%,再灌流24時間後の虚血領域における梗塞巣の割合は45%であった。 2.チトクロムP450阻害剤の梗塞巣進展抑制作用 チトクロムP450阻害剤であるスルファフェナゾール(30mg/kg)を再灌流時に大腿動脈より投与し、24時間後に梗塞巣の進展を評価したところ、虚血領域における梗塞巣の割合は12%であった。 3.心筋過酸化脂質の定量 再灌流24時間後において,虚血部位における過酸化脂質は,Sham群と比較して増加した。スルファフェナゾールの再灌流時における投与は,その増加抑制した。 以上の結果は,再灌流障害において,チトクロムP450より生しる酸化ストレスが障害を引き起こすことを示唆している。今後は,チトクロムP450阻害剤投与時における循環動態を測定し,チトクロムP450阻害剤の再灌流障害治療薬(予防薬)としての可能性を評する。
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