本研究は、in vivo心筋梗塞モデルラットを使用し、(1)チトクロムP450(CYP)が心臓再灌流障害における活性酸素生成源であること、(2)CYP阻害薬処置により、再灌流障害における心機能の悪化が軽減すること、を明らかにすることを目的としている。H19年度において、CYP阻害薬であるスルファフェナゾール(SPZ)が虚血-再灌流障害抑制作用を有することを示した。そこで、H20年度は、SPZ投与時における心循環動態を測定し、さらに、SPZの再灌流障害抑制メカニズムについて詳細に検討した。 1.SPZ投与による心循環動態の改善 ラット冠状動脈左前下行枝を1時間結紮後24時間再灌流することにより、再灌流障害を誘導した。再灌流障害により、収縮期左心室圧、及びdp/dt maxが低下した。また、LVEDPの上昇が見られた。再灌流時にSPZを大腿静脈より投与したところ、SPZは濃度依存的にこれらのパラメーターの変化を改善した。 2.SPZによる心筋活性酸素量の減少 活性酸素反応性色素であるジヒドロエチジウムを、再灌流10分後に心尖より投与した。投与後、凍結切片を作製し、共焦点顕微鏡下でエチジウムの蛍光を観察した。再灌流により心筋活性酸素量の増大が認められた。また、SPZ投与により、心筋活性酸素量が低下した。 3.SPZによる心筋CYP活性の阻害 SPZをラットに投与した後心臓を摘出し、ミクロソーム分画を調整した。ミクロソーム分画におけるテストステロンの代謝を指標に、心筋CYP活性を測定した。SPZは、心筋ミクロソームのテストステロン代謝を有意に抑制した。 以上の結果より、SPZの再灌流障害治療(予防)薬としての可能性を示すことができた。SPZは、心筋CYPを阻害し、活性酸素の生成を抑制することにより再灌流障害に奏功すると考えられる。
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