歯牙欠損を有する患者へのインプラント治療法は、現在最も予知性の高い歯科補綴治療法の一つである。近年、ビスホスホネート服用中(特に、静脈内投与中)の患者に対するインプラント治療を含む歯科治療により、顎骨壊死が発生する症例が次々に報告され、bisphosphonate-related osteonecrosis of the jawsという特別なカテゴリーが設定され、その対策が米国をはじめ欧州・豪州で緊急報告されている。 研究代表者は、“下顎骨は他骨に比べ、ビスホスホネート服用中に分子間架橋の異常な骨コラーゲンが蓄積するため骨質が劣化し、その事がインプラント治療時の顎骨特異的壊死の一要因にとなる"と仮説を立てた。この仮説を検証するために、ビスホスホネート服用後に下顎骨と大腿骨に同時にインプラント埋入を行い、下顎骨のみに壊死が起こるかを検証することを研究の目的1とした。また、ビスホスホネート服用・非服用時の下顎骨および大腿骨において、コラーゲンの分子間架橋を分析することにより、その骨質を比較することを目的2とした。 最も顎骨壊死の発症頻度の高いとされるzoledronateを用いて、ラットの腹膜内に6週間投与したが、インプラント埋入と顎骨壊死の発症を検証するところまでは実験が至らなかった。Zoledronate投与群と非投与群においては、肉眼的所見としての顕著な身体的特徴の変化、採取骨の性状の変化は認められなかった。 コラーゲン架橋構造に関連し、その種類を決定する重要な因子として、骨コラーゲン中のリシン残基の水酸化の変化がある。現在、zoledronate投与群と非投与群の、下顎骨と大腿骨のコラーゲンリシン残基の水酸化の程度を比較検討中である。
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