本研究は脳・神経疾患患者の転倒予防のために、脳卒中患者およびパーキンソン病患者のそれぞれに特徴的な転倒予測指標を明らかにすること、およびそれに基づいた各疾患別の転倒予測スケール開発を目的としている。平成19年度は、すでにバランス機能等の評価を行った脳卒中およびパーキンソン病患者を1年間追跡することにより、バランス指標や転倒既往などの転倒関連要因と追跡期間中の転倒発生との関連を疾患別に検討した。 ベースライン調査者のうち追跡調査に同意の得られた脳卒中患者125名(応諾率88.0%)、パーキンソン病患者54名(応諾率80.6%)を対象に、1年間の転倒状況を3か月毎に電話または郵送にて確認した。転倒者は1年間に1回以上転倒した者と定義した。 結果、脳卒中患者については調査協力者中再梗塞や転居等の16名を脱落とし、残りの109名を分析対象者とした。分析対象者のうち過去1年間の転倒経験を有した者(n=29)はそうでない者(n=80)と比較して、1年間の追跡期間中の転倒生起割合が高かった(それぞれ62.1%、21.3%、p<.001)。また、パーキンソン病患者についても脱落16名を除いた41名を対象とし解析した結果、過去1年間の転倒経験を有した者(n=22)はそうでない者(n=19)と比較して、1年間の追跡期間中の転倒生起割合が高かった(それぞれ77.3%、36.8%、p=.009)。 次年度は、過去の転倒経験のない脳卒中およびパーキンソン病患者を対象に転倒関連要因の検討をすすめるとともに、その結果を元に個々の疾患で最も関連の強い転倒危険因子を既存の転倒アセスメントツールに追加し、脳・神経疾患患者に対する転倒スクリーニング・スケールの開発およびスケールの有効性を疾患別に検討する予定である。
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