【目的】これまでの我々の研究により、脳卒中やパーキンソン病などの脳神経疾患患者において「爪先立ち動作の可否」や「スクワット動作の可否」が独立した転倒予測指標となることが明らかとなった。そこで本研究では、脳神経疾患患者における転倒アセスメントツールの有効性を「爪先立ち動作の可否」や「スクワット動作の可否」を用いて検討した。 【方法】対象は一大学病院の神経内科および脳神経外科に入院した患者とし、入院時に行われる既存の転倒アセスメントツール評価と同時に「爪先立ち動作の可否」および「スクワット動作の可否」を評価し、入院中の転倒の有無を追跡調査した。解析は既存のツール単独の場合、既存のツールに「爪先立ち動作の可否」および「スクワット動作の可否」の評価を追加した場合の感度・特異度をそれぞれ算出した。 【結果】調査対象者136名のうち欠損があった25名を除外し111名を分析対象者とした。分析対象者の年齢(平均値±標準偏差)は57.5±19.5歳、性別は男性が55名(49.5%)であった。診療科の内訳は神経内科45名(40.5%)、脳神経外科66名(59.5%)であった。入院中に1回以上転倒したものは10名(9.0%)であった。既存の転倒アセスメントツール合計得点は8.0±5.1点(35点満点)で、このツールによって転倒の危険が高いと評価される17点以上のものは6名(5.4%)であった。入院時に評価された既存のツール合計得点の感度は20.0%で、特異度は96.0%であった。一方、既存のツールに加えて「爪先立ち動作の可否」を評価項目に加えると感度90%、特異度63.4%で、「スクワット動作の可否」を評価項目に加えると感度90%、特異度54.5%であった。 【結論】脳神経疾患患者の場合、既存の転倒アセスメントツールに加えて「爪先立ち動作の可否」や「スクワット動作の可否」の評価を行うことで有効性の高い転倒者スクリーニングスケールとなることが示された。
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