研究課題
H20年度はHsp90阻害剤17-AAGがどのようなメカニズムで炭素イオン線(以下、炭素線)の殺細胞効果を増強するのかを突き止め、炭素線増感メカニズムの基礎的知見の収得を目標として様々な実験を行った。H19年度の結果から、H20年度は実験に前立腺癌由来のDU145細胞のみを用い、DU145細胞において17-AAGの濃度依存的な線量生存率曲線を取得し、17-AAGの濃度に依存して生存率が顕著に減少することを明らかにした。また、H19年度の結果から、17-AAGの照射前処理によりG2チェックポイントが阻害され、M期での細胞分裂不能による細胞死が起こることが予測された。しかし、H20年度でM期特異的マーカーであるヒストンH3リン酸化抗体を用いてM期細胞の測定を行ったところ、G2チェックポイント阻害によるM期細胞の増加は確認されたものの、照射時のM期細胞の割合は全細胞の30%程度と低く、またM期細胞のみの生存率曲線は増感がほとんど見られなかったことから、M期細胞の増加及びM期での照射は17-AAGによる炭素線増感作用との直接的な関係はないことが推測された。治療に用いるLET(70keV/um)の炭素線において、放射線感受性の細胞周期依存はX線より少ないものの、観測されており、細胞周期制御に関係するタンパク質等の阻害が炭素線増感に寄与する可能性も提案されている。しかし、本研究の結果から細胞周期制御は炭素線増感に関与しないことが示唆された。その他、17-AAGの誘導体でありチロシンキナーゼ阻害剤としても知られるHerbimycinを用い、X線の殺細胞効果の増強を調べた。その結果、Herbimycinは複数のガン細胞で放射線作用を増強し、二本鎖切断修復を強く阻害することを明らかにした。これはRadiation physics and chemistryに投稿し、H21年内に掲載予定である。
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Radiation Physics and Chemistry (印刷中)
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