研究概要 |
本年度は、遺伝子発現解析を行う前準備として比較解析する細胞群の選別を行った。既に赤芽球〜脱核赤血球への分化誘導系は確立しているが、この分化誘導系では様々な分化段階の赤芽球が混在するため、そのまま細胞を解析に用いることは特異的な遺伝子を同定するためには不都合である。そこで、フローサイトメトリーによる細胞表面抗原解析と細胞内核酸含有量の差異により、細胞を3〜4段階に分類することにした。当初、代表的な赤血球系マーカーであるGlycophorin-Aを用いる予定であったが、十分分化が進行した赤血球に抗Glycophorin-A抗体を反応させると細胞が凝集してしまうことがわかった。そこで、凡血球マーカーでありながら赤血球系細胞では発現しないCD45抗原を指標とし、CD45陰性細胞中で(1)細胞のサイズ(FSC)、(2)SYTO16による生体核染色を利用した核酸含有量、の2点で赤血球系細胞を分類した。結果、[a]FSC-high,SYTO16+,[b]FSC-low,SYTO16+,(脱核直前)[c]FSC-low,SYTO16-(脱核直後)の3段階の区分が可能であることが判明した。この分類法は、従来より用いられている形態学的分類法と非常によく対応していることが分取後の細胞の形態解析などにより確認された。 網羅的遺伝子発現解析(マイクロアレイによるmRNA解析)の前に、前述の方法で分取した細胞のmRNAを用いてDifferential Display法、Subtraction法を実施し、特異的遺伝子の同定を目指したが、これらの手法では特筆すべき差は認められなかった。このことから、マイクロアレイを用いた網羅的かつより詳細な解析が必須であると結論づけると同時に、核の凝集した赤芽球ではmRNAよりもタンパク質の解析が有効であると判断し、来年度は二次元電気泳動のスポット解析を実施することを前提に研究を進展する予定である。
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