本研究では結核菌の細胞侵入に関与する分子群のひとつであるmce(mammalian cell entry)オペロンについて、各タンパク質に対し宿主細胞側で応答する因子の探索を目的として実験を開始した。宿主側分子の探索に当たり各mce遺伝子の発現状況を確認するため、まずBCG Tokyo株についてRT-PCR法を用い、mce1およびmce2オペロンの各遺伝子がmRNAに転写されていることを明らかにした。これにより各Mceタンパク質は菌体内で発現し、何らかの機能を持つことが期待される。非病原性大腸菌に結核菌のMce1A、Mce3AまたはMce3Eタンパク質を発現させるとこれらの大腸菌は細胞今の侵入能を獲得することから、他にもこのような能力を持つMceタンパク質がないか調べるため、BCG Tokyo株のmce1およびmce2オペロンの各遺伝子をクローニングし大腸菌に導入して細胞侵入能を確認した。これまでの報告と同様Mce1Aを発現させた大腸菌は細胞侵入能を獲得したが、それ以外に新たに細胞侵入能を付与するmce遺伝子は同定できなかった。 BCGはmce3オペロンを持たないため、Mce3AとMce3Eについては確認していない。次年度は結核菌を用いてmce3およびmce4についても検討を加え、細胞侵入能を付与するMceタンパク質のスクリーニングを完了しこれらと相互作用する宿主細胞因子の網羅的な探索を行なう。
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