Mceタンパク質について宿主細胞に対する作用機構の解明を目指し、生化学的手法による解析を試みた。結核菌には存在するがウシ型結核菌には存在しないmce3オペロンに着目し、サルモネラのフラジェリンタンパク質FliCおよびFljBと相同性が高いMce3Bについて、大腸菌にて大量発現させ精製を試みた。一般的に用いられるBL21株ではタンパク質の発現が見られなかったが、結核菌をはじめとする抗酸菌ではグラム陰性の大腸菌とはコドン使用頻度が異なるためと推測される。大腸菌内で使用頻度の低いコドンを含むタンパク質を効率的に発現するように工夫されたRosetta株を用いて大量発現させ分画したところ、目的タンパク質は封入体や膜画分に含まれていた。そこでN末側に存在する疎水性領域を欠失させ、水溶性画分からタンパク質の精製を行なった。HEK293T細胞にpNFkB-SEAPをトランスフェクションし、レポーターアッセイにてMce3Bに対するTLR5応答の有無を確認したところ、対照と比べわずかにNFkBからの発現が上昇していた。現在のところ有為差を得るには至ってないが、目的タンパク質の精度や量が十分でなかったこともあり、タグを検討し純度の高い精製タンパク質を十分量得ることで解決できると考えている。本研究では細胞侵入に関与するmce才ペロンのうち、Mce3Bについて宿主細胞TLR5との関与を示唆した。これにより結核菌が自然免疫を惹起し炎症反応を引き起こして感染に利用している可能性も考えられ、細胞侵入に際する新たな分子メカニズムが今後更に明らかになっていくことが期待できる。
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