肝細胞癌における新規がん抑制遺伝子を同定することを目的として、non-sensemediated decay pathwayの阻害前後における全ゲノムレベルでのmRNA発現パターンの変化を網羅的に検索するscreening strategyを施行した(詳細は「研究実施計画」および「研究の目的」に記載の通りである)。Screeningに用いた肝細胞がん細胞株は10株であり、各々NMD pathway阻害前後の網羅的mRNA発現解析を、Agilent technologies社のwhole genome arrayを用いて検索した。NMD pathway阻害後に特異的にmRNAの発現上昇が見られた遺伝子のうち、当該細胞株において染色体欠損を伴う領域に存在する遺伝子(すでに蓄積されている我々の研究室独自のdata baseであり、細胞株における全ゲノムレベルでの染色体構造異常を網羅的に検索した情報を使用した)を「新規がん抑制遺伝子の候補」としてlist upし、それらの遺伝子に対してmutation screeningを施行しているところである。当初の予定通りの進行度であり、さらに精力的にmutation screeningを施行することにより、肝細胞がんにおける新規がん抑制遺伝子の同定に至ると思われる。新規がん抑制遺伝子が同定されたならば、当該遺伝子は将来の分子標的治療の標的としての可能性、あるいは診断マーカーや予後予測マーカーとしての可能性も大いに有しているため、本研究は極めて意義深く重要なものと考えられる。
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