研究概要 |
3 Tesla全身用MRI装置に適合する、ラット精巣計測用高感度信号受信コイルを作製した。ファントム実験において、従来の人体用高感度コイルと比較して約9倍の信号検出感度を達成した。正常ラット精巣のスピンエコー法T2強調画像計測では、4.7Tesla動物用MRI装置を用いた先行研究(Yamaguchi M, et al. ISMRM 2006)と同様、最小64ミクロンの空間分解能にて、直径約200-300ミクロンの精細管の生体内描出に成功した。ヒト計測が可能な全身用MRI装置でも、100ミクロン程度の微細構造を描出可能となった点は、本研究成果を臨床へ応用する契機となりうる点で、大きな意義がある。さらに、MRI測定パルスシークエンスを工夫し、反転回復法T1強調画像(反転時間500-700msec)によるT1強調コントラスト付与にても、精細管の描出に成功した。これは、グラジエントエコー法T1強調画像法による精細管の3次元高分解能生体内画像取得に結びつく、重要な知見である。 MRS計測では、オートシミング法を導入し、精巣内代謝物の高感度計測を目指したものの、125mm^3の計測範囲内で、充分な磁場均一性を得ることができなかった(水プロトン信号の半値幅で15-20Hz)。しかし、ラット正常精巣内に比較的豊富に含まれるコリン・クレアチンピークの検出には成功した。この二つのピークは、慢性的な造精障害では、いずれもピークが低下し、造精機能の指標となりうる。従って次年度以降に計画している抗癌剤投与による造精障害の検出に有用と考えられる。
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