研究概要 |
今回の研究においては,カンボディアにおける中世遺跡,わけてもプノンペンとピニャールーの2カ所にあったとされる日本町を対象とし,カンボディアにおける中世遺跡との関連を明らかにするとともに,当該期の日本人町について,日本出土遺物と関連する遺物の出土をもとに,その生産流通関係を考察する。一方で,ガンボディアにおける中世期の調査研究のために,クメール陶器の窯跡を調査し,クメール陶器の編年研究を推進する。クメール陶器の編年は,日本とカンボディアとの中世期における関係を知る上で,有用な物差しとなる可能性を秘めている。以上の調査研究によって,中世期における日本とカンボディアの関係をより深く考察するとともに,カンボディアにおける流通関係を明らかにする目的で実施した。 その成果として,日本人町ピニャールーの遺物調査を行い,肥前陶磁数点を確認するとともに,中国陶磁,在地土器を確認し,当時の物資の移動の一端を把握するに至った。またアンコール・ワット日本人墨書調査を行い,劣化著しい墨書を記録化することにより,当時の日本人の足取りを捉えることができた。中世カンボディアのクメール陶器編年研究としては,ソサイ窯跡群A11号窯の最終発掘調査を行った。生産器種や製品の詳細,窯構造が明らかになり,近隣窯跡との関連性,クメール陶器生産の様相を解明する上で貴重な資料となった。 これまでの研究成果を,当該年度末に成果報告書として刊行した。
|