カルコゲナイドガラスや金属ガラスのガラス形成能は、応用上の重要性から多くの注目を集めてきたが、その制御因子は不明であった。特に、複数の原子種を混合することによりある組成でガラス形成能が劇的に向上することが経験的に知られていたが、その物理的機構は未解明であった。そこでこの謎に迫るべく、分子動力学シミュレーションを用いて、大きく異なるガラス形成能を持つ3つのモデル金属系について研究を行った。その結果、これらの系の結晶化の熱力学的駆動力には大きな差はないこと、一方で、液体と結晶の界面張力は大きく異なることを見出した。また、これらの液体のダイナミクスにも大きな差がないことから、これらの系のガラス形成能の違いは、液体・結晶間の界面張力によって支配されていることが明らかとなった。さらに、界面張力は、液体中に自発的に形成される構造的な秩序とその構造内の原子組成によって決定されていることを明らかにした。また、界面張力は、結晶の核形成を支配しているだけでなく、結晶成長にも大きな影響を与えることを明らかにした。これらの事実は、古典的な結晶化理論には重大な欠陥があり、これまで考えられてこなかった液体中に形成される局所的な構造秩序の効果をあらわに考慮する必要があることを強く示唆している。
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