研究課題
近年の医療業界では、人工骨や人工関節などのインプラント材が広く普及しているが、それらの使用後の術後感染症(SSI)は重篤な合併症の1つであり、大きな問題となっている。本研究課題では、優れた骨形成能に加えて感染症を予防できる「優れた骨形成能と抗菌性を併せ持つ多機能型人工骨」を開発するとともに、細菌感染を想定した生体適合性の評価モデルの構築に成功した。当該研究を進めるにあたり、受入研究者は、主宰する研究室で保有するセラミックス創製や生体適合性評価に係わるノウハウを提供し、フェローはそれらを活用しながら研究を展開した。より具体的には、人工骨として実績のある水酸アパタイト(HAp)に骨形成促進作用をもつケイ素および抗菌性を持つ銀を同時に置換固溶させたバイオセラミックスを作製した。得られたセラミックスの物性(結晶相や微細構造など)を明らかにするとともに、骨芽細胞を用いて生体適合性と緑膿菌(P. aeruginosa)を用いて抗菌性を評価した。さらに、好適な銀およびケイ素を含有したHApセラミックスを用いて、SIIを想定した骨芽細胞と細菌を併用した2つの感染モデルも確立した。一つ目のモデルはセラミックスに細菌と細胞を同時に播種する実験系であり、これは手術時に感染が生じるケースを想定している。もう一つのモデルはセラミックスに最初に細菌を播種し、ついで細胞を播種する実験系である。これは材料の滅菌が失敗したために感染が生じるケースを想定している。ここで得られた研究成果は、現在、国際誌に投稿中である。また、別のアプローチとして、イノシトールリン酸というキレート化合物を分子接着剤として利用して、ケイ素含有HApセラミックスに抗菌性イオンである銀イオンを修飾する研究も実施した。実際に、ケイ素含有HApに抗菌性を付与することに成功している。この研究成果も近い将来国際誌に投稿予定である。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Materials Science & Engineering C
巻: 125 ページ: 112083
10.1016/j.msec.2021.112083