溶鋼‐溶融スラグ間の界面張力が化学反応中に低下する現象に対して、酸素の界面への吸着・脱離の影響を解明するために、溶鋼表面上に、溶融スラグ滴を滴下させた後の、両者の接触角の変化から、界面張力の動的変化に関する情報を実験的に求め、界面張力の動的変化に及ぼす化学反応の影響に関する実験結果を系統的に蓄積した。特に、溶融スラグ中のB2O3濃度を変化させて、さらに溶融スラグの塩基度ならびにそれに伴う粘度を変化させ、化学反応中に溶鋼‐溶融スラグ間の界面張力が動的に変化する様子を精度よく計測した。溶融スラグ中の主としてSiO2が解離して、SiとOが溶鋼‐溶融スラグ界面を溶融スラグ側から溶鋼側に向けて移行する際に、Oだけは界面に一時的に吸着停滞し、その後、徐々に脱離、または溶鋼中のSiよりも酸化性の強いAlやTiと反応して、酸素の界面濃度が低下し、化学反応が生じている際の一時的な界面張力の低下現象を定量的に説明できるモデルを導出した。また、従来からバルク相を対象として多成分系溶融スラグ・溶融鉄合金の化学反応を扱う競合反応モデルを上記の界面張力のモデルと連結し、多成分系溶融スラグと多成分系溶鋼が反応する際の、種々の成分が時間的にそれぞれの相において変化する様子を再現できるとともに、同時に、化学反応が生じている間の溶融スラグ―溶鋼間の界面張力の変化も計算できる物理化学モデルを完成することができた。さらに、各種パラメータを変化させた際の化学反応時の溶鋼‐溶融スラグ間の界面張力が変化する様子を再現できる計算を行った。また、世界的規模で活用されている熱力学データベースとリンクさせ、上記で導出した計算モデルならびに計算プログラムと連結させ、溶鋼‐溶融スラグが反応する際の両相中の成分変化を計算するとともに、その際の界面張力の動的変化も同時に推算できるシステム環境を整えた。
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