ミャンマーにおいて換金作物としてリョクトウ,ケツルアズキとヒヨコマメの3種のマメ科植物は重要であり,これらのマメ科作物の窒素固定を促進する土着の根粒菌の分離と選別を計画した. まず,ミャンマーから各マメ科作物の栽培地域22カ所から土壌をサンプリングし,各々の土壌の懸濁液をサンプリングした地域で栽培されている宿主植物の種子を殺菌後人工培土に播種して接種した.播種・接種後4週間栽培し,形成された根粒から土着の根粒菌110菌株を分離した.分離した根粒菌の属と種を決定するためにPCRで16S rRNAの配列を増幅してシーケンス解析し,日本DNAデータバンクの相同性検索プログラムで検索した.ミャンマーのリョクトウとケツルアズキに形成した根粒菌はBradyrhizobium属に,ヒヨコマメのそれはMesorhizobium属に属していた.これらの結果は,ミャンマーで最初の報告であり国際誌2報で公開した.また,得られた16S rRNAのシークエンス結果をDDBJに登録した.次に分離した根粒菌から窒素固定活性の高い根粒菌をスクリーニングした.純化した根粒菌110菌株を,それぞれの宿主の滅菌種子を殺菌した培地に播種・接種して4週間栽培し,根系のアセチレン還元活性(ARA)を測定した.この接種試験とARAの測定を3回繰り返した.各菌株を接種した個体ごとにアセチレン還元法で窒素固定の活性(ARA活性)を比較した結果から,活性の高い5菌株を選抜した.また,ヒヨコマメ,リョクトウおよびケツルアズキを用いて,選抜した根粒菌株と放線菌の共接種による根粒形成および窒素固定能力の効率を前述と同様に調査した.その結果,リョクトウとケツルアズキのARAを単一接種よりも有意に促進した. 以上のことから本研究で選抜した根粒菌がバイオ肥料生産のために有効に活用できると判断した.
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