研究課題/領域番号 |
19F18309
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西平 直 京都大学, 教育学研究科, 教授 (90228205)
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研究分担者 |
LEGENDRE ALEXANDRE 京都大学, 教育学研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 哲学 / 身体技法 / 武術 |
研究実績の概要 |
2019年度は、身体技法の実践についての参与観察・データ収集を集中的に行い、その習得および心身の変容過程を分析した。 (1)フィールドワーク:申請書に記載の通り、武術教室および銭湯(日本・台湾)における身体技法の習得・修練を対象として継続的な調査を行った。具体的には、日本・台湾・中国をはじめとする武術・太極拳の流派に通じている師範の武術教室(東京)に参加しながら、稽古における心身の変容についての理論と実践を調査した(2019年10月までは月8回、2019年11月からは月4回のペース)。調査にあたっては、師範の許可のもと稽古をできるだけビデオカメラに記録し、「力」のやりとりを微細に分析できるようにした。また一人称的な経験についての語りを得るため、師範や学習者に対するインタビューも行った。加えて、銭湯をフィールドとして、心身を整える技法(hygienic rituals)についても参与観察を継続した(月に5~10回のペース。2019年9月には台湾での調査も行った)。 (2)研究成果の公表:武術の研究者・実践家が集う国際研究フォーラム(新北市・台湾)に出席し、研究発表を行った(New Taipei International Martial Arts Forum)。また、哲学的観点(ベルクソンを中心とする)から武術の身体技法の意義を考察した論文を投稿し、国際的に評価の高い学術雑誌『Sport, Ethics and Philosophy』(査読付、Q1)に掲載された。これらを経て、これまで共同研究を進めてきたフランスに加え、台湾やイギリスにおける研究者・実践家との国際的ネットワークも構築することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調にフィールドワークを継続し、有意義なデータが収集できているためである。加えて、武術教室の師範を中心に、武術に関わる知的・人的ネットワークが広がり、今後調査の幅を広げる素地が整ってきた。また、パリ大学(Universite de Paris, UFR STAPS)との連携プロジェクトも進みつつあり、とりわけ2020年に予定されている国際学会「The European Association for the Philosophy of Sport (EAPS)」では、実行委員に推挙され、哲学・人類学・社会学などの領域を越える国際交流の一翼を担っている。並行して、国際共著本の編集・刊行、複数の国際共著論文執筆の準備も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続きフィールド調査を進め、身体技法の実践における事例を収集する。また、収集したデータを踏まえ、フランスをはじめとする西洋哲学における心身問題に対する問題提起を理論化していく。 (1)フィールドワーク:引き続き、武術および銭湯を中心として、身体技法についての先駆的な事例に関する資料を収集する。武術においては、東京のみならず、名古屋、京都などの事例についても調査を広げる予定である。また、銭湯における調査では、東京と京都を中心とする銭湯文化について観点を広げるとともに、利用者・経営者にインタビューを行い、具体的な身体実践を解明していく。 (2)共同研究の発展:国際学会の組織・運営および発表が決定しているため、それらの機会を活かし、哲学や人類学分野の研究者とのネットワークを広げるとともに、成果を論文に発表する。また、パリ大学スポーツ・健康科学研究所(L’institut des Sciences du Sport-Sante de Paris: URP3625 / 8211, I3SP)との共同研究の成果として、国際共著本を編集・刊行する。
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