近年、熱・プラズモニクスは、エネルギー貯蔵・光熱療法・ドラッグデリバリーや、バイオセンサーなどへの応用が期待されており、急速に研究が展開している。光熱変換材料では、低強度のレーザー光によって表面プラズモン共鳴を引き起こすことで、効率良く光エネルギーを熱エネルギーへと変換できる。本研究課題では、様々なナノ材料から構成される複合ナノ構造に着目し、熱・プラズモン変換の特性を理論および数値 計算によって調べ、より効率的な光熱変換を可能とする複合ナノ構造の設計を目的としている。 2020年度は、非晶質薬物のガラス状ダイナミクスとプラズモニックナノ構造体の光熱加熱を調べるため、ナノ構造体の吸収・散乱・消光スペクトルを、ミー理論と双極子近似を用いて解析した。さらに、プラズモニック材料を含む溶液と空気との界面領域における光吸収エネルギーを求め、熱拡散方程式によって熱勾配の時間発展を解析した。このモデルによって、気化過程における水の温度上昇と重量は、最近の実験結果と定量的に一致することを前年度に解明した。2020年度では、ディープラーニング技術を用いて、最適な性能・特性を得るために必要なナノ材料の構造パラメータを探索する手法を開発した。 上記に加えて、アモルファスにおける二次緩和時間についての理論研究を実施した。冷却速度や圧力が、アモルファスドラッグにおける構造の二次緩和時間や動的脆弱性に影響することがわかっている。しかし最近の計算機シミュレーションのタイムスケールは106ps以下であるのに対し、実験観測のタイムスケールは約100sである。そこで、非線形ランジュバン方程式を用いて、1psから104sまでの時間領域における緩和時間を評価した。特に、2020年度では、この手法では、2成分または3成分からなる複合材料の緩和過程に適用し、共同研究グループによる実験データを再現することに成功した。
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