研究実績の概要 |
受け入れ研究者らは、二つのセンサーを搭載したマイクロセンシングシステムを開発した。このシステムは、脳内局所の抗てんかん薬などの薬物濃度と、さらに同時にその薬の効果を神経の電気活動として捉える(Nature Biomedical Engineering, 1:654-666, 2017)。しかしながら、さらなる脳神経疾患や薬物療法の理解には、脳の電気的活動のみならず、それを惹起する神経伝達物質の濃度測定も重要と考えられる。哺乳類の中枢神経系における主要な興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸は、神経活動に伴う情報の伝達に非常に重要な役割を果たしている。てんかんをはじめ、いくつかの脳神経疾患に伴って、グルタミン酸の異常な分泌増加が生じる。グルタミン酸濃度の上昇は、電気的な神経活動の増強のみならず、減衰とも相関する病態が知られている。よって本研究では、外国人特別研究員がグルタミン酸特異的な酵素であるL-グルタミン酸オキシダーゼを用いた針状グルタミン酸センサを開発した。研究員は、博士課程において酵素センサ開発の経験を持つ。そして、グルタミン酸センサと受け入れ研究者の局所薬物計測システムとの融合を試みた。本開発システムにより、脳の局所領域の薬物濃度と同時に、グルタミン酸濃度の観察が可能となり、さらなる病態理解や治療法の開発が期待される。
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