2020年度の研究は、前年度からの繰越による鹿児島薩摩焼の調査に加えて、京都(京都工芸繊維大学美術工芸資料館、京都国立博物館、京都国立近代美術館、大山崎山荘美術館、河井寛次郎記念館、清水三年坂美術館、京都陶磁器会館)、名古屋・岐阜(横山美術館、瀬戸蔵ミュージアム、瀬戸市美術館、岐阜県立現代陶芸美術館、美濃焼ミュージアム)、東京・横浜(日本民藝館、宮川香山眞葛ミュージアム、東京国立近代美術館工芸館)、金沢(国立工芸館、石川県立美術館前、いしかわ生活工芸ミュージアム、金沢美術工芸大学柳宗理記念研究所、山鬼文庫)、益子(益子陶芸美術館、旧濱田庄司邸)、大阪・兵庫(兵庫県陶芸美術館、丹波焼の里、東洋陶磁美術館)などで調査を重ね、各地における輸出陶芸の実態を調べた。 調査の成果としては、明治期の輸出工芸において薩摩(鹿児島)以外で制作される「@@薩摩」に焦点をあてて、そのような薩摩風の作品が明治前半にさかんに制作されることを「薩摩現象」と捉えた。そして、薩摩現象の実態を京都の錦光山、横浜の宮川香山を例として、その必然性と薩摩から離れてゆくことの意味を輸出陶磁器の評価の問題と合わせて考察した。とくに、錦光山宗兵衛において、中澤岩太・浅井忠らが導入したアールヌーヴォーの影響が薩摩から離れてゆく作風変化に果たした役割を分析した。
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