研究課題
世界最大の大陸であるアジア大陸の形成プロセスを議論する上で、その大部分を占める中央アジア造山帯の形成時代とテクトニクスを理解することは、当該大陸の成長過程のみならず、地球史における超大陸の形成および分裂プロセスの理解につながる。特に本研究では中国北西部のタリム地塊およびその周辺地域の岩石に注目し、パレオテチス海の閉塞にともなう造山運動のテクトニクスの解明をおこなった。また、この造山運動の汎世界的特徴を理解するため、マラウイなどの時代の他地域の岩石の研究も並行して行った。本研究の主な成果として、以下の3点があげられる。1) 北部Altyn Tagh地域の年代分析から、当該地域に広く分布する堆積岩が4.7~4.6億年前の短期間に堆積したことを明らかにした。これはパレオテチス海の一部である北Altyn海の閉塞時期を意味しており、既存のデータと組みわせることにより、パレオテチス海は5~4.2億年前に段階的に閉塞した(つまり大陸が衝突した)ことを意味している。2) 北部Altyn Tagh地域の堆積岩から得られた堆積年代は8.8~7.6億年前よやや古く、これは約7.5億年前のロディニア超大陸の分裂の直前に形成されたリフト帯を充填した堆積物であると考えられる。同様の年代をもつ岩石の広域対比から、タリム地域は当時、南中国地塊や北インド地塊と連続していたと考えられる。3) 中部Altyn Tagh地域の堆積岩の堆積年代は最も若く4.6~4.3億年前である。つまりこの堆積岩はパレオテチス海の閉塞の後に堆積したものである。鉱物のHf同位体データから、これら堆積物を供給した後背地には、海の閉塞によって生じた大陸衝突にともなって形成された様々な火成岩が露出していたと考えられる。これは、一般的に大陸衝突にともない大規模なマグマ活動が起こることと調和的である。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Precambrian Research
巻: 352 ページ: 106007
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