本研究では、固体天体の長期進化を解き明かす、1次元ー3次元結合モデルの開発を行った。2年度目は特に1次元モデルと3次元モデルの対比によって、内部の溶融のモデル化手法を検討した。地球などの岩石の天体内部の一部は溶融してマグマが形成され、火山活動などが引き起こされる。一方、氷を主体とする天体では融解によって内部海や内部湖が形成する。このような内部溶融は、天体の熱輸送や物質輸送に大きく影響するため、固体天体進化において重要である。溶融は温度が局所的にソリダスを超える場所で起こるため、本質的に水平不均質を考慮しなくてはならず、3次元数値計算が必須である。しかしそのような計算は非常に計算コストが大きいため、数十億年という長い時間を計算することは非現実的である。したがって、内部溶融はそもそも無視されるか、極めて簡略化されてモデル化されてきた。本研究では、1次元モデルの局所的適用を通して、この課題克服の可能性を探った。まずは第1ステップとして、内部発熱のみの系を考え、3次元計算を再現する1次元計算手法の開発を行った。その際、受入研究者がこれまで発展させてきた混合距離理論モデルを応用した。その結果、対流層の平均温度や最大温度の鉛直分布を1次元計算によって比較的高精度に求めることができ、これらの鉛直分布から溶融量や溶融深さを比較的精度よく求められることができることが分かった。この結果をまとめた論文を執筆した(査読中)。
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