研究課題/領域番号 |
19F19031
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 衛 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (20210560)
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研究分担者 |
SSESSANGA NICHOLAS 京都大学, 生存圏研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2019-10-11 – 2022-03-31
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キーワード | 3次元トモグラフィー / 電離圏構造 / GPS全電子数観測 / イオノゾンデ |
研究実績の概要 |
衛星測位(Global Navigation Satellite System; GNSS)は、4以上の衛星からの電波到来時刻の精密測定から3次元位置を測定する。2周波数の電波位相から電離圏の全電子数(Total Electron Content; TEC)が測定される。国土地理院の観測網GEONETを用いることで、日本上空の電離圏電子密度の3次元分布をリアルタイムにトモグラフィー解析している。特別研究員として来日したセサンガ博士は、電離圏トモグラフィー解析の専門家であって、これまで、特にデータの変動部分に注目することで電離圏イレギュラリティを捉えることに成功してきた。本研究では、我々の3次元トモグラフィーに同博士の手法を取り込むことで空間+時間の4次元化、かつ電離圏擾乱に対応した新しいトモグラフィーの開発を進め、日本上空の電離圏電子密度モニタリングの精度・分解能を向上する。 2019年度においては、以下の研究成果を得た。まず、トモグラフィー解析精度の検証を行った。イオノゾンデやCOSMIC衛星を用いたGPS掩蔽観測により得られた観測結果との比較、更にMUレーダーが行う非干渉散乱(Incoherent scatter, IS)エコーの観測との比較を行った。これらから、5月の解析結果では非常に良い一致が見られたが、そのほかの月(特に11月の結果)については、トモグラフィー解析による電離圏ピークが、MUレーダー観測よりも数10km高く現れる傾向が明らかとなった。これまでのトモグラフィー解析手段を改良する必要性が明らかとなった。 そこでセサンガ博士が、GNSS-TECに他の観測データを加えて実施する異種データ混在トモグラフィ解析手法の開発を進めた。2019年度の段階でイオノゾンデ・データを活用することでトモグラフィ結果の高度決定精度が向上するとの初期結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、まず、セサンガ博士による日本側の3次元トモグラフィー解析への理解を進めた。引き続き別の観測手段であるイオノゾンデ観測データを取り込んで解析精度(特に電子密度の高度分布)の向上を目指した。GPS利用TEC観測とイオノゾンデという異なる種類のデータを統合的に扱う手法を見出し、解析プログラムに実装した結果、初期的ではあるが有望な結果を得た。ここまでの研究進捗は極めて順調であった。さらなる解析手法の発展のため、米国と台湾が共同で打上げたCOSMIC-2衛星に搭載されたGPS受信機を用いた、宇宙からのGPS利用TEC観測データを得て、トモグラフィー解析への統合を進めようとしたが、衛星側のデータ配信の遅れから研究計画に狂いを生じたため、研究期間の延長を申し出て認められた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の主たる目的は、GPS利用TEC観測データからの3次元トモグラフィー解析の高度化である。すでにイオノゾンデ観測データの統合に関して成果を得ていることから、これをさらに推進する。具体的には、COSMIC-2衛星などが取得する宇宙からのGPS利用TEC観測データの統合である。一方、最近では小型で安価な高性能GPS受信ボードが発売されていることから、これを用いた新しいTEC観測システムの構築をこころみる。新しいTEC観測システムが完成すれば、日本のようにGPS受信機網が発達していない地域においても、独自に受信機を展開して所望のデータ得てトモグラフィー解析を試みることが可能になると期待される。今後は以上の方向について研究を進めて行く。
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