研究課題/領域番号 |
19F19032
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊丹 健一郎 名古屋大学, 理学研究科(WPI), 教授 (80311728)
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研究分担者 |
CHAOLUMEN 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | ヘリセン / ナノグラフェン / 多環芳香族炭化水素 / アズレン |
研究実績の概要 |
今年度、アズレンを出発物質とし5、6、7員環を含む新しいπ拡張アズレンを合成することに成功した。アズレンのブロモ化、鈴木・宮浦カップリングによるてるテルフェニル基の導入によって、アリールアズレンを合成したのち、塩化鉄(III)による分子間C-H/C-Hカップリング反応と分子内の脱水素環化反応によって、らせん構造をもつπ拡張ヘリセンへと誘導した。合成した化合物は、5、6、7員環を含む新しいナノカーボン構造をもっており、かつキラルカラムによってそのエナンチオマーを分離することが可能であった。分離したエナンチオマーはねじれたヘリセン構造に由来した円二色性の吸収をしめした。X線構造解析やCV測定、量子化学計算などを通じて、合成した化合物の構造的・電子的性質を明らかにするとともに、新たらしい非ヘキサゴナルナノカーボンとしてChem. Commun.誌へ論文報告を行った。また、論文はカバーピクチャーに選ばれるなど注目を浴びた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最初の大きな目標である5、6、7員環を含む新しいナノカーボンの合成に成功しているため、計画通り研究が順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、アズレン誘導体を出発物質としてもちいて、段階的な縮環縮環π拡張を行い、五員環、六員環、七員環、八員環をふくむさらなる非ヘキサゴナルナノグラフェンの合成を目指す。アズレンを出発物質とし、位置選択的なハロゲン化、カップリング反応、脱水素環化反応などを駆使し、五員環、六員環、七員環からなる平面性の高い非ヘキサゴナルナノグラフェンの合成や、ねじれたヘリセン構造をもつ新規多環芳香族炭化水素の 合成を目指す。また所属する研究室で開発されている縮環π拡張反応なども適宜適用し、芳香環直接アリール化によるより効率的な非ヘキサゴ ナルナノグラフェンの合成法の検討も行う。X線構造解析やCV測定、量子化学計算などを通じて、合成した化合物の構造的・電子的性質を明らかにする。薄膜太陽電池の素子などへの応用を見越し、共同研究による素子評価などもおこなう予定である。
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