研究課題/領域番号 |
19F19039
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西井 準治 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (60357697)
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研究分担者 |
KHURELBAATAR ZAGARZUSEM 北海道大学, 電子科学研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | グラフェン / ナノ接合 / 電界効果 / ダイヤモンドアンビルセル |
研究実績の概要 |
本研究ではグラフェンをベースにした種々の革新的デバイスの開発を進めている。 令和元年度はグラフェンを用いたショットキーダイオード、およびGe/グラフェン/メタルのサンドイッチ構造を有する機能性デバイスについて研究に取り組み、その成果の一部を「The 20th RIES-HOKUDAI International Symposium(札幌)」と「The 13th Pacific Rim Conference of Ceramic Societies (PACRIM13)(那覇)」にて発表を行った。 また、ナノスケール接合技術とグラフェン作製技術を融合させた、新規機能性デバイスについても研究を推進している。これは、グラフェンのエッジとエッジの間に自己組織化単分子膜を挟んだグラフェン/分子/グラフェンの超微小接合を作製し、超高感度光検出の原理を検証することを目的としている。このデバイス作製における最も困難な点は、2枚のガラスの間にグラフェンを挟んで、窒素雰囲気の高温高圧下で接合するところにある。実際に接合する際、グラフェンに与える物理的なダメ―ジが大きく、現在これを解決するための合成条件や、新たに取り入れる技術を模索しているところである。 一方で、グラフェンを用いた新規デバイスとして高圧下での電界効果トランジスタ(FET)デバイスの開発を同時に進めている。この研究に関しては、比較的容易にFET効果を測定する段階まで進展させることができている。現在は圧力印加条件を詳細に調査し、最適化を行っており、その後、精密な電気計測を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は電界効果型ダイヤモンドアンビルセル(DAC)をグラフェンに適用し、グラフェンの高圧下での電子物性制御を試みた。電界効果型DACは、圧力と温度とキャリア密度を同時に制御することが可能な素子であり、所属グループで初めて開発された。この素子ではキャリア注入にイオン液体を用いるが、これはDACにおける圧力媒体としての役割も同時に担っている。 近年、3層のグラフェンを積層した場合に、高圧下では半導体的な挙動を示すことが報告されている。電界効果型DACを、このようなグラフェンに適用した場合、高圧下で半導体的に振る舞うグラフェンに対して、電界効果によりキャリアを制御し、電子物性に変調を与えることが可能である。令和元年度は実際にこの素子を作製し、電圧の印加に伴う抵抗の変化を観測することに成功した。一方、圧力の印加に対して、電極が切断される問題が生じたが、これについては電極形状を調整することで種々の解決策を検討している。試行錯誤を繰り返している段階ではあるが、十分に実現可能と判断できるため、おおむね順調に進展していると考えられる
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は引き続き、グラフェンをベースにした各種新規デバイスの開発を進める。現在のところ、DACを用いた高圧下でのFETデバイスが順調に開発されているため、引き続きこのデバイスを中心に研究を推進する。現状の素子では圧媒体にイオン液体とBNを混合した分散溶液を用いているが、この圧媒体がグラフェンに物理的なダメージを与えている可能性が示唆されており、液体のみを圧媒体として用いるなどの改良を加える。得られた素子については、印加電圧、圧力、及び温度の各パラメータを調整し、グラフェンの基礎物性における新たな側面を見出す研究を推進する。
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