研究実績の概要 |
本研究では光触媒内部及び表面で光照射時に起こる過程をキャリアダイナミクスの観点から解析し,可視光応答型水分解用光触媒の高効率化に有効な構造・物性,およびそれらの機能を明らかにすることを目的としている.昨年度は光触媒と助触媒の相互作用を詳細に検討し, 助触媒による励起電荷の捕獲効率が光触媒活性に支配的な影響を及ぼしていることを明らかにした.今年度も助触媒の担持法や分散性が光触媒作用に及ぼす影響を継続して検討し,助触媒の高分散化や電子捕獲効率の重要性を示した.さらに,Zスキーム型光触媒シートの解析に取り組み,水素生成光触媒(HEP)と酸素生成光触媒(OEP)が共存した試料のキャリアダイナミクス解明の方法論を示した.一例をあげると,導電性基材にHEPとOEPの両方が固定されている場合の方が,HEPあるいはOEPのいずれか片方のみが固定されている場合に比べ,励起電子の濃度が高くなることを見出した.また,HEPとOEPの両方を励起すると,HEPのみを励起した場合に比べて電子が長寿命化されることがわかった.これらは,OEPの電子がHEPの正孔と再結合するZスキームの進行を反映している.また,導電層がない場合には再結合が促進された.このように,HEPとOEPが共存するZスキーム系の反応機構をキャリアダイナミクスの観点から実証したのは初めての例であると思われる.さらに,光触媒シートに対する表面修飾層,および助触媒担持の効果についても検討した.助触媒を担持することで励起電子の寿命は短くなったことから,助触媒への電子注入が起こったことがわかった.また,適切な表面修飾を施すことで,HEPから助触媒への電子注入の効率が向上すると同時にOEPに残存する励起正孔の濃度も増加し,それに伴い水分解活性も向上した.一連の結果から,表面修飾によって光触媒シート内部の電荷分離が一層促進されたことがわかった.
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