研究課題/領域番号 |
19F19055
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
藤井 学 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 特任准教授 (30598503)
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研究分担者 |
ELSAMADONY MOHAMED 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2019-07-24 – 2021-03-31
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キーワード | ナノ炭素吸着材 / 難分解有機物 / 除去技術 |
研究実績の概要 |
下排水処理水には医薬品等の難分解性の有機物が含まれる。本研究では、ナノ炭素吸着材を用いることで難分解有機物の除去・分解技術を開発することを目的とする。ナノ材料は比表面積が非常に大きく高い吸着特性を示すため、従来の高度処理では除去できなかった難分解有機物を効率的に吸着除去できると考えられる。本研究では、具体的には、様々な水質条件における処理効率の評価や、吸着材再生技術等に取り組むことで、実環境で適用可能な吸着能の高いナノ炭素材料を開発する。研究初年度では、まず複数のナノカーボン(カーボンナノチューブ等)を用いて、難分解性微量汚染有機物の物理化学吸着試験ならびに微生物処理試験を行った。吸着試験に関して、カルボフランなどの汚染有機物の試験系を構築するとともに、吸着試験を開始した。サンプリング時間や水質条件(pH、汚染物質濃度、ナノ炭素吸着材濃度など)を変化させ予備試験を複数回実施するとともに、HPLCやTOC計による有機物の分析系を確立した。微生物処理試験に関して、超音波処理した汚泥試料を多層カーボンナノチューブ複合材料とともに嫌気性消化することにより、汚泥の分解効率ならびにバイオガス生成が上昇した。具体的には、ヒドロゲナーゼ、プロテアーゼ、およびα-アミラーゼの触媒活性などにより、水素ガス生成が上昇することが確認できた。また、高濃度のナノカーボンを添加した場合、ガス生成能が低下したが、これは活性酸素種などによる細胞の酸化ストレスによって引き起こされる可能性が示唆された。以上の微生物処理試験によるカーボンナノチューブの効果は、カーボンナノチューブが有する高い伝導性ならびに吸着特性によりもたらされるものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度では、カーボンナノ材料を用いた吸着実験系を確立するとともに、カーボンナノ材料を添加した微生物試験系を実施し、分解効率ならびにバイオガス生成が上昇することが確認できた。従って、研究初年度の研究計画を達成しており、おおむね順調に進んでいると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究では、当初の研究計画通り、初年度に構築した吸着実験系において、水質条件が処理効率に及ぼす影響の精査や、吸着材再生技術等に取り組むことで、実環境で適用可能な吸着能の高いナノ炭素材料を開発する。
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