研究課題/領域番号 |
19F19064
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
朴 龍洙 静岡大学, グリーン科学技術研究所, 教授 (90238246)
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研究分担者 |
GANGANBOINA AKHILESH 静岡大学, グリーン科学技術研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2019-10-11 – 2022-03-31
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キーワード | E型肝炎ウイルス / 電気触媒 / ナノ粒子 / 電極触媒水酸化反応 / 磁気ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
ウイルス感染症の被害を最小限に止めるためには、発生初期段階での高感度ウイルス検出が求められる。2年目には、1年目に完成したデュアルモダリティセンシングをさらに発展させるために、プラチナ(Pt)を組み込んだコバルト(Co)ベースのゼオライトイミダゾールフレームワーク(ZIF-67)を使用した電極触媒水酸化反応(WOR)によるE型肝炎ウイルス(HEV)の迅速な検出法を開発した。 ZIF-67の表面空洞に大量の白金ナノ粒子(Pt NP)を詰め込んだPt@ ZIF-67を、分速2℃で500℃まで焼成し、空洞を形成させた白金-四三酸化コバルト中空ケージ(Pt-Co3O4 HC)を合成した。得られたPt-Co3O4 HCは、PtとCo3O4の相乗的相互作用によって電極触媒反応が促進され、その電気触媒活性はボルタンメトリーとクロノアンペロメトリーによって評価した。合成したPt-Co3O4 HCは、抗HEV抗体を修飾した(Ab @ Pt-Co3O4 HC)。一方、検体の夾雑物の分離のために抗HEV抗体を修飾した磁性ナノ粒子(Ab-MNP)を作製した。HEVの存在下でAb @ Pt-Co3O4 HCとAb-MNPは、ウイルスと結合しナノコンポジットサンドイッチ構造を形成し、電極触媒活性を示した。 本ナノコンポジットサンドイッチイムノアッセイを評価するために、細胞培養上清から収集したHEV (G7遺伝子型)を検出したところ、検出感度が61 RNAコピ/mLであった。この検出法は、中性溶液でのウイルス検出のための効果的なワンステップアプローチウイルス検出を実現し、将来の電極触媒手法を用いたウイルス検出の可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、順調に白金-四三酸化コバルト中空ケージ(Pt-Co3O4 HC)の合成に成功した。また、ホスト研究室には電気化学的検出設備が完備されていたので、電気触媒活性の計測が出来た。これらの理由で、期待以上に研究を推進出来た。
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今後の研究の推進方策 |
2年目に作製した検出システムを用いてウイルスを検出し、問題点を改善し、キット化を目指す。比較対象として市販の検出キットや当研究室で確立した検出法を用いる。 1.ウイルス検出に必要なパラメーターを設定し、定量的に検出できる手法を確立する。検出感度、ウイルスに対する選択性及び抗体の交差反応を確認しながら、最適検出条件を確立する。 2.上記の研究で確立したプロトコールに従い、ウイルス様粒子をウイルス材料として検出を行う。検出が可能であれば、検出系の安定性をチェックしながら、臨床用ウイルスを検出する。このような検出の成果を特許や論文に発表する。 上記の研究成果「ナノ粒子包埋高分子ナノ小胞」を、抗HEV抗体の検出に活用する。E型肝炎ウイルス様粒子(HEV-LP)が自己組織化する際に、量子ドット(QD)をキャップセル化し、ナノ複合カーゴ構造(QD-HEV-LP)を形成する。また、標的抗体を結合できるIgGを修飾した磁気ナノ粒子(MNP)を用い、標的抗体を夾雑物から分離する。QD-HEV-LPは標的抗体、抗HEV抗体と結合し、標的抗体はMNPと結合する。この操作で、MNPとQD-HEV-LPは、標的抗体とナノ複合体構造を形成する。この構造体のカーゴ由来の蛍光強度は、カーゴに結合した標的抗体の濃度を示し、標的抗体の濃度に比例するので、抗体の定量化が可能である。
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