研究課題/領域番号 |
19F19087
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川北 篤 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (80467399)
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研究分担者 |
AHMED AYMAN 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | タマバエ科 / コミカンソウ属 / コバンノキ / ニューカレドニア / ヤマノイモ属 |
研究実績の概要 |
タマバエ科は、虫えい形成性をはじめ多様な生活史をもつ双翅目の一群で、ほとんどの種が2mm内外の微小な昆虫である。その多くは植食性であり、一般には農業害虫としてのイメージが強い。しかし、まだ生態が未解明の膨大な種の存在を鑑みると、タマバエ科昆虫が自然界で果たしている役割が十分に理解されていない可能性がある。我々は最近、日本に生育するいくつかの植物が、もっぱらタマバエによって花粉が運ばれているらしいことを見出した。今年度は西日本に生育するコバンノキが、雄花に虫えいを形成するClinodiplosis属のタマバエと、このタマバエに労働寄生するMacrolabis属の2種のタマバエに特異的に受粉されていることを明らかにした。コバンノキが含まれるコミカンソウ属はニューカレドニアで適応放散を遂げているが、現地での野外調査の結果、これらにも雄花に虫えいを作るタマバエが多数存在し、一部は送粉に寄与しているらしいことが分かった。また、ヤマノイモ属の多くの種にタマバエに訪花されるものがあることを見出し、これらの植物は花に虫えいを作るタマバエにも利用されていた。得られたタマバエについては形態、および分子系統解析によって分類学的整理を行い、論文の執筆を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り順調にコミカンソウ属、ヤマノイモ属においてタマバエ媒が存在することを示すデータが得られた。また、ヤマノイモ属ではタマバエが花に虫えいを形成しているという予想外の発見があった。熱帯地域で多様化を遂げているコミカンソウ属やヤマノイモ属でタマバエ媒が見つかったことは、タマバエが植物の寄生者としてだけでなく、共生者としての重要な側面があることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度はニューカレドニアでより重点的な調査を行い、コミカンソウ属の花に虫えいを作るタマバエがどの程度送粉に寄与しているのかを明らかにする。また、コミカンソウ属、タマバエ両者の分子系統樹を作成し、タマバエの寄主特異性や両者の共進化関係などについて解析を進める。ヤマノイモ属では訪花観察をより充実させ、タマバエ媒であることを示すデータを補強する。花に訪れるタマバエと虫えいを作るタマバエが同じかどうかについても明らかにする。
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