研究課題/領域番号 |
19F19092
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
昆 泰寛 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (10178402)
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研究分担者 |
Masum Md. Abdul 北海道大学, 獣医学研究院, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2019-10-11 – 2021-03-31
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キーワード | 自己免疫疾患 / 免疫組織 / モデルマウス / 結合組織 / 血管 / 尿路 |
研究実績の概要 |
我々は、動物の尿路にリンパ組織を発見し、「尿路関連リンパ組織」と名付け、研究を進めている。この尿路関連リンパ組織は、特にマウスの腎盤の深部に存在することがわかっている。一方、本年度の研究において、腎盤は腎実質と結合組織で連絡し、その結合組織を介して腎臓内血管系とも密接な関係を有することがわかった。軽度に発達する腎盤の尿路関連リンパ組織およびその付近の血管周囲には膠原線維が発達し、その中にはリンパ球が散在性にみられた。 また本年度は、この尿路関連リンパ組織に連絡する血管周囲の結合組織の詳細な組織構造に着目し、その形態学的解析を進めた。健常マウスと自己免疫疾患モデルマウスの当該領域を病理組織学的に比較した。当該結合組織領域には、T細胞、B細胞およびマクロファージが存在した。また、その中には線維芽細胞も存在し、いくつかの線維芽細胞はリンパ組織の形成に重要な炎症メディエーター(サイトカイン、ケモカイン)を発現していた。これらの免疫担当細胞、線維芽細胞やケモカインの発現量は自己免疫疾患モデルマウスで増加する傾向にあり、尿路関連リンパ組織の発達と正の相関を示す傾向にあった。予備的実験ではあるが、自己免疫疾患モデルマウスをデキサメタゾンで治療したところ、腎炎の軽減と共に、これらの部位における免疫担当細胞の集簇が軽減する傾向にあった。引き続き、尿路関連リンパ組織と血管系の関連、その病態意義を継続して解析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、尿路関連リンパ組織周囲に存在する結合組織の分子形態を解析することができた。当該領域は尿路関連リンパ組織の発達に重要な役割を果たしていると考えられ、その基礎データを得た。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、昨年度見出したマウスの尿路関連リンパ組織と血管周囲結合組織の関連性を形態機能学的アプローチから明らかにする。 ① 尿路関連リンパ組織と血管周囲結合組織の構造解析:これらに局在する免疫担当細胞(リンパ球、マクロファージ、樹状細胞等のサブタイプ)、線維芽細胞のサブタイプ、微小血管やリンパ管を遺伝子発現と細胞マーカーを用いた免疫染色で明らかにする。また、結合組織ネットワーク構造を透過型電子顕微鏡と走査型電子顕微鏡で明らかにする。 ② 尿路関連リンパ組織と血管周囲結合組織の形成を担う分子群の解析:網羅的遺伝子発現解析を駆使して、これらの発達に関与する分子群、特にサイトカイン、ケモカインならびに各種成長因子を明らかにする。同定した分子群について、定量的PCR法、ウエスタンブロッティングおよび免疫染色を用いてその発現量や局在を明らかにする。 ③ デキサメタゾン治療後のこれらの形態・発現変化の解析:全身性自己免疫疾患モデルマウスを用いて、未処置群とデキサメタゾン治療群でこれらの構造や分子群の発現を全身状態や腎機能と比較解析する。顕著に変動する分子については、尿路関連リンパ組織や血管周囲結合組織の形成に関与する候補と予測し、その発現量と局在を未処置群とデキサメタゾン治療群で比較する。
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