生体が外界と接する部位には免疫学的障壁が存在し、口腔や咽頭に局在する「扁桃」などはその一例である。一方、当研究チームでは尿生殖器も外界と交通することに着目し、その関連リンパ組織の探索に力を入れている。これまで我々は動物の尿路にリンパ組織を発見し、「尿路関連リンパ組織」と名付けて研究を進めている。この尿路関連リンパ組織は、特にマウスの腎盤の深部に存在することを明らかにしており、結合組織を介して腎臓内血管系とも密接な関係を有する。これまでの解析により、この結合組織領域には、膠原線維や細網線維が発達し、その網目構造の中にT細胞、B細胞およびマクロファージが局在することを光学顕微鏡で明らかにした。 本年度は、尿路関連リンパ組織、特に血管周囲組織と結合する結合組織ネットワーク構造を透過型電子顕微鏡と走査型電子顕微鏡で可視化した。結合組織内には、膠原線維等による網目構造が形成され、その中でリンパ球とマクロファージが接着する像を得た。網羅的遺伝子発現解析によって結合組織領域に発現する分子群を解析したところ、I型~Ⅲ型コラーゲン分子の発現が豊富であり、サイトカイン・ケモカインの発現細胞が局在することも明らかにした。また、一部のケモカインは、血管中膜の平滑筋細胞にも発現していた。加えて、全身性自己免疫疾患モデルマウスを用いて、未処置群とデキサメタゾン治療群を作出して比較解析したところ、デキサメタゾン治療群で結合組織領域内の免疫細胞が減少した。 以上、今年度はマウスの尿路関連リンパ組織、特に血管周囲結合組織との関連性、その形態学的特徴およびそれらの病態における変化を明らかにした。
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