研究課題/領域番号 |
19F19096
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
沖野 龍文 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (30280910)
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研究分担者 |
PHAN CHIN SOON 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2019-07-24 – 2021-03-31
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キーワード | シアノバクテリア / 環状ペプチド / NMR |
研究実績の概要 |
ラン藻の生物活性物質の生合成能力を最大限活用するため、自然条件あるいは通常培養条件下では発現されていない生合成酵素を誘導するため共培養あるいは様々な培養条件の変化を検討した。第一段階として湖沼における赤潮現象ともいえるアオコ形成種を中心に淡水産ラン藻の培養を試みた。異なるラン藻種を共培養することによる生成化合物のプロファイルの変化をLC/MSで検討した。その結果、アオコ形成種の代表であるMicrocystis aeruginosaにこれまで報告されていない化合物を発見した。そこで、大量培養を実施し、有機溶媒抽出、溶媒抽出、ODSカラムによる粗分画、HPLCによる精製を経て、複数の化合物を単離した。それらについて、NMRおよびMSによって平面構造を決定した。立体配置については、必要な標準化合物を準備したので、次年度に決定する予定である。得られた化合物は3種類に分けられる。直鎖ペプチドが1種類と環状ペプチドが2種類である。いずれも類似のペプチドが多数あるいは少数報告されているが、その構成アミノ酸には、ほとんど天然にみられない特殊なアミノ酸、および天然にはない修飾がされているアミノ酸が含まれていた。これらのアミノ酸の生合成酵素についても検討を次年度以降進めることとした。以上の通り、非常によく研究されてきたラン藻であるMicrocystis aeruginosaでさえも極めて珍しい構造を有する化合物を生産することが明らかになった。なお、年度末においてマレーシアで採集することを当初は計画していたが、出張の自粛が求められたので、実施しなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規化合物の発見という点では十分な数を発見することができたし、その構造は生合成酵素の研究をする価値があるほどユニークなものであったから。
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今後の研究の推進方策 |
ラン藻の共培養だけでなく、培養条件の違いにより異なる化合物を生産させることも試みて、さらに多くの化合物の単離・精製に臨みたい。また、初年度の研究で生合成研究をする価値のある化合物が発見されたので、構造決定や活性評価にとどもらず、生合成研究を進めていく予定である。マレーシアでの採集は実施せず、国内で入手可能なラン藻だけで十分な研究成果が得られる見込みである。
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