藍藻の生物活性物質の生合成能力を最大限活用するため、自然条件あるいは通常培養条件下では発現していない生合成酵素を誘導することを試みた。マレーシアの藍藻を検討することを当初計画していたが、海外出張ができない状況であったため、前年度同様国内で入手可能な淡水産藍藻に絞って検討した。共培養あるいは種々の培養条件を検討し、LC/MSで生成化合物のプロファイルを検討した結果、淡水産藍藻2種の生産する化合物をターゲットとして定めた。アオコ形成種のMicrocystis aeruginosaから得られた環状ペプチドの平面構造は前年度決定済みであり、今年度は立体配置を決定した。また、天然にはみられない修飾がみられたので、その修飾酵素について、ゲノム解析後クローニングして、組み換えタンパク質を調製して種々の性質を検討した。その修飾の有無によって抗菌活性に違いが生じることが見いだされた。残りの特別研究員の期間を使って、論文発表の予定である。また、別種の藍藻からは、トリプシンを阻害する直鎖ペプチドを発見した。構造決定の結果、spumigin類と類似の構造であるものの、アミノ酸残基が一つ少ないという点でこれまでにない化合物であった。本種についてもゲノム解析を行った結果、見いだされた生合成酵素クラスターにより生産されることが合理的に説明できることがわかった。今回の研究を通して、これまでよく研究されていたラン藻株においても新規化合物を生産するポテンシャルがあることが示された。
|