研究課題/領域番号 |
19F19303
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
木村 敏明 東北大学, 文学研究科, 教授 (80322923)
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研究分担者 |
PARK BYOUNGDO 東北大学, 文学研究科, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2019-10-11 – 2022-03-31
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キーワード | 災害死者 / 明暦の大火 / 享保の飢饉 / 島原大変 |
研究実績の概要 |
2019年9月から2020年3月まで、国内での研究発表1回、海外での研究発表1回、国内で現地調査と資料調査を2回行った。まず、2019年9月14日に東京の帝京科学大学で開かれた日本宗教学会78回大会で「幕末の災害と災害錦絵の登場」という発表を行った。そして2019年11月14日から15日までに韓国ソウルの慶熙大学校(Kyung Hee University)で開かれた韓国宗教学会2019年秋季大会に参加し、「近世末日本の災害錦絵における三つの問題―神、死、呪術」という研究発表を行い、また韓国宗教学界に研究状況に関して情報取集も行った。2020年1月15日から18日まで東京で1回目の現地調査と文献調査を行った。東京墨田区両国の回向院では1657年に起きた明暦の大火の死者供養石碑について現地調査を行い、石碑の写真撮影と銘文分析をした。その後、神奈川県立博物館、東京大学図書館、史料編纂所、国会図書館で明暦大火と2月に実施する予定の九州調査に必要な文献調査を行った。2回目の九州調査は、2020年2月16日から27日まで行った。享保の飢饉の災害死者研究のために、福岡市内、福岡県、佐賀県の寺院や町の供養塔と地蔵像の現地調査と写真撮影を行った。その後、熊本と島原半島で1792年の雲仙岳噴火災害である「島原大変」に関する調査を行った。関連文献を熊本大学図書館、口之津図書館、島原図書館松平文庫で調査した。それを通して「肥前温泉災害記」、「島原地変記」などの資料を確報した。そして島原市周辺の寺院と町に残されている供養塔を調査し、写真撮影を行った。合わせて1991年の平成雲仙岳噴火に関する資料も雲仙岳災害記念館などで収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年9月から2020年3月までの研究は、博士研究の補完研究として1657年の明暦の大火と1732-33年の享保の飢饉関連の災害死者研究を行うことが目標であった。東京回向院での1回目の現地調査で関連供養塔の写真撮影を行い、銘文分析のための資料を確報した。2回目の現地調査では、享保の飢饉関連の供養塔と地蔵像の調査を行い、40年前に行った調査内容を確認し、写真撮影をした。現在そのまま残っているものもあれば、確認できないものもあった。1792年に起きた島原大変関連の調査は、2020年度に別の計画で行う予定であったが、予算や時間を考慮して今回の調査で一緒に行うことにした。熊本と島原での資料館と図書館で島原大変関連の文献調査を行い、関連災害見聞記を確報した。また、周辺の供養塔の現地調査を行い、位置や銘文を確認した。島原大変については今回の調査で取集した資料を用いて、ひとつの事例研究としてまとめていくつもりである。計画していた発表を行い、現地調査も完了したということで、2019年度の研究はおおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年4月からの研究は、新型コロナウイルス感染症大流行の影響で元の計画通りに行うことは難しくなる可能性がある。国内の学会や研究会の中止と延期、国際学会も中止が相次いでいる。今年に予定していた研究発表の機会がなくなっているが、7月の災害人文学研究会、9月の日本宗教学会大会、11月の東北宗教学研究会などで可能であれば研究発表を行いたいと考えている。一方、図書館や資料館での文献調査や寺院などでの現地調査も状況を見ながら調査計画を調整していくつもりである。2020年度は群馬県と長野県で1783年の浅間山大噴火関連の調査、宮城県・岩手県・青森県で1782-88年の天明の飢饉と1833-39年の天保の大飢饉関連の供養塔と地蔵像の現地調査を行う予定であったが、コロナ事態の影響を考慮して調査計画を決めていきたいと考えている。そして2021年度の研究計画として設定している1822年の文政コレラ大流行と1858年の安政コレラ大流行の日韓比較研究を、伝染病災害への関心が高まっている今年に行うことも意義があるため、文献調査と分析を中心に今年から研究を始めることも考えている。その場合、東京とソウルなどで文献調査を行う計画も入れる必要があるが、移動自体が制限される可能性もあるため、入手可能な資料から分析していきたい。
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