研究課題/領域番号 |
19F19303
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
木村 敏明 東北大学, 文学研究科, 教授 (80322923)
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研究分担者 |
PARK BYOUNGDO 東北大学, 文学研究科, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2019-10-11 – 2022-03-31
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キーワード | 近世災害 / 災害錦絵 / 享保の飢饉 / 近世疫病 / コロナ禍 / 災害と宗教 |
研究実績の概要 |
2020年4月から2021年3月まで、3回の研究発表、2本の論文発表、そして1冊の単独著書を刊行した。 2020年7月30日には東北大学東北アジア研究センター災害人文学ユニットの研究会で「近世日本の疫病と災害錦絵、そしてコロナ研究」という発表を行った。この発表では、近世日本の疫病として疱瘡・麻疹・コレラ流行をとりあげ、これらの疫病への宗教的対処にふれた。とくに幕末期に登場する「はしか絵」と「コレラ絵」の呪術性に焦点を合わせて分析した。そしてコロナ感染症の流行とそれに伴って現れた「アマビエ」などの近世日本の疫病関連の絵画についてもふれた。この研究発表の内容をまとめて「『災害』としての近世日本の『疫病』と 宗教的対処――疱瘡・麻疹・コレラからコロナまで」(『現代宗教2021』国際宗教研究所、2021年)という論文を出版した。 2020年9月20日に開かれた日本宗教学会第79回学術大会では、「十九世紀朝鮮におけるコレラ大流行と宗教」という発表を行った。この発表では、近世日本での初めてのコレラ流行である1822年の文政コレラ流行との比較事例として1821年の朝鮮でのコレラ流行をとりあげ、関連基礎資料の内容を分析した。 2020年12月には「近世飢饉災害における宗教者の救済活動: 施行と水陸会――享保の飢饉と『天下太平豊年記』を中心に」(『東北宗教学』16号、2020年)という論文を出版した。この論文では近世飢饉の際に宗教者が行った救済活動について『天下太平豊年記』という文献を中心に分析した。 2021年2月2日には東北大学宗教学研究室が開催した第111回宗教学研究会では「近世日本の災害と宗教」というタイトルで講演を行った。この講演会では今までの研究をまとめて2021年3月刊行した『近世日本の災害と宗教: 呪術・終末・慰霊・象徴』(吉川弘文館、2021年)の内容をもとに、近世日本の災害を宗教学でどのように研究できるかについてふれた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度には、コロナ感染症事態の深刻化により、当初計画していた研究計画を大幅修正せざるを得なかった。近世日本の災害研究との比較事例として取り上げようとしていた韓国とインドネシアへの現地調査が不可能になり、日本国内の現地調査と文献調査を中心に行った。計画していた近世日本の大火、飢饉、津波の供養塔の調査とともに、東日本大震災の調査、コロナ感染症事態に関する調査も行った。それをもとに近世疫病と飢饉に関する研究発表と論文出版を行った。そして、博士論文研究や昨年度と本年度の調査内容を合わせて『近世日本の災害と宗教: 呪術・終末・慰霊・象徴』という単著を出版することができた。この著書の中には「近世災害における大量死者の発生・埋葬・慰霊」という本研究課題の研究成果が多く含まれている。とくに享保・天明・天保の飢饉とその後に建立された供養塔と地蔵像の銘文と写真資料が含まれている点で大きな意味がある。現地調査や文献調査に大きな制約があったものの、目標していた研究成果はある程度達成することはできたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度と同じく2021年度もコロナ感染症事態により、研究に大きな制約が発生すると予想される。本年度も予定していた韓国などでの海外調査や研究発表は難しいため、日本国内を中心とした現地調査と文献調査を行っていくつもりである。昨年度には本研究課題の「近世災害死者」の問題とともに、日本全国各地の資料館と博物館を訪問し、全国的には知られていない各地域での災害と関連資料を発掘しようとした。本年度も3.11東日本大震災、コロナ感染症事態に関する調査とともに、各地域での災害と災害関連資料の調査を行っていくつもりである。そして、昨年度には資料館の休館などで延期していた1783年の浅間山大噴火関連の調査を群馬県と長野県で行う予定である。文献調査とともに浅間山大噴火による死者供養塔の現地調査を行い、銘文の確認と写真撮影を行う。そして、昨年度の東北地方の飢饉調査の補完調査として青森県と岩手県で天明・天保の飢饉関連の供養塔と地蔵像などの現地調査を行う予定である。それにあわせて同地域での明治・昭和三陸地震津波災害、3.11東日本大震災関連の供養塔の調査も行う。こうした調査内容をもとに、6月と8月にオンライン開催研究会で研究発表を行っていく。
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