今後の研究の推進方策 |
時系列モデルへ逐次分析手法について、いくつかの方向への拡張を考えている。自己回帰モデル以外、MA, ARMA, ARIMA, ARFIMAといった様々な時系列モデルについて停止時を用いて統計的逐次解析の手法が適用することが考えられる。 特に金融時系列モデルとして最も関心が高いARCH, GARCHなどの非線形時系列モデルにおいても当分析手法が適用できると考えられ、それらのモデルの研究を行う予定である。さらに、変化点の問題についても研究を行う。膨大な経済・金融などのデータが秒単位でオンライン観測されている現状を考えると、未知の変化の変化点の早期探索,モデルの早期探知が重要な課題になっている。 また、同様の手法を用いて分析することが可能な別のモデルのクラスへの拡張を考える。具体的には、疫学で重要な分枝過程に対して統計的逐次分析手法を適用し、分枝過程の感染率(基本再生産数)などの逐次検定の問題についての研究を行う予定である。新型コロナウィルスのような感染症の感染者の数が増えていく状況を単純化して確率モデルにすると、各時点での合計の感染者の数は分枝過程としてモデル化できる。離散時間で観測された分枝過程が連続時間の拡散過程 Cox-Ingersoll-Ross (CIR) モデルで近似でき、時系列モデルと同じような統計的逐次解析手法が適用できると考えられる。応用可能になれば、例えば緊急事態宣言などの政策が発令された後、政策当局は感染症の基本再生産数が1を下回っているかどうかをできる限り早く知り、解除の意思決定を行うことが可能かどうかといった問題を解決するには有用であると考えられる。
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