駆動力付きの平均曲率流方程式は、結晶表面でのステップの動きを記述するなど結晶成長現象の記述には重要な方程式である。具体的な問題として、例えば以下を考える。結晶表面を上から見てみるとステップは動く曲線とみなせる。このステップの成長は、上から降ってくる分子が付着することによって進んでいく。いつも一定量の分子が付着するという状況では、この曲線の動きは駆動力付き平均曲率流方程式で記述されると考えられている。これが最も簡単なモデルであり、この方程式はしばしばアイコナール・曲率流方程式と呼ばれ、準線形の放物型方程式の典型的な例である。これらは一様な放物型方程式ではないため、そのディリクレ境界値問題は境界での剥離の問題など複雑な問題が生じうる。不純物があるとステップの両端が固定されるかたちになり、数学的にはディリクレ問題となる。曲線がグラフで与えられている場合は、境界上で定数であるというディリクレ条件が維持できるかどうかが問題となる。具体的には境界上で微分係数が無限大になるかがどうかが問題になる。この方程式について確かに境界で微分係数が無限大になることを厳密に示すことに成功した。また障害物問題等も考察した。これらの成果は、偏微分方程式分野で新しく刊行された著名国際学術誌に出版される予定となっている。関連する研究は、本学の三竹大寿准教授との共同研究論文と、明治大学の森龍之介研究員との共同研究論文として公表されている。
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