研究課題
本研究では、これまでに三宅島における電磁場測定データを利用して、MT法により比抵抗構造を推定した。今年度はその構造・解釈を補強するために、その他の観測データを利用した解析を実施した。一つは、自然電位(SP)観測である。当観測は2020年10月に三宅島にて実施した。観測方法を概説すると、1 km長の電線の両端に2個の鉛-塩化鉛電極を接続し、両電極を互いの距離を変えながら接地させて2点間の電位差を測定するものである。当観測では、三宅島を北東-南西に縦断するように50m間隔で測定を実施した。その結果測線両端(海側)では相対的に電位が高く、標高が上がるほど電位が低くなるが、山頂に近づくにつれ再度電位が高くなる。一連の電位分布はいわゆる「W字型」SPを示し、このことは山頂下に顕著な熱水系が存在していることを示唆する。比抵抗構造で海水準~深さ2kmに低比抵抗層が存在したが、これはこの熱水系が発達したことにより変質した粘土層であると考えられる。また、当地の震源分布をみると、この層内では、火山性の長周期地震が多く発生しており、このことも同じく流体が関与することにより液相の長周期振動によって引き起こされたものと考えられる。一方その層の下では長周期地震はおこらず構造性の地震のみが発生しており、液相の関与は薄いことが示唆された。また、査読付きの国際誌でありJournal of Geophysical Research: Solid Earth誌に論文を投稿し、掲載された。
2: おおむね順調に進展している
MT法解析、SP解析がともに完了し、研究は順調に進んでいるといえる。
最終年度は、熱水流動シミュレーションコードを用いて三宅島の状態を模した数値計算を実施し、三宅島下の流体分布を推定し、既に得られている比抵抗構造や自然電位分布と整合的かどうかを確認し、必要に応じて構造モデルを再修正する予定である。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Journal of Geophysical Research: Solid Earth
巻: 126 ページ: -
10.1029/2021JB022034