研究課題/領域番号 |
19F19335
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村田 靖次郎 京都大学, 化学研究所, 教授 (40314273)
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研究分担者 |
ZHANG SHENG 京都大学, 化学研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2019-10-11 – 2022-03-31
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キーワード | 拡張フラーレン / 開口フラーレン / 単結晶X線構造解析 |
研究実績の概要 |
フラーレンは、主に炭素棒のアーク放電や芳香族化合物の不完全燃焼によって得られる煤から抽出され、主にサッカーボール型のC60やラグビーボール型のC70が比較的大量に得られるものとして単離されている。これらのプロセスにおいては、C60やC70よりも大きなフラーレンも多数の異性体混合物として極少量のみ生成しているが、その単離は多段階の高速液体クロマトグラフィーに依存しており、純粋な物質を単離することは極めて困難である。そこで、大量に得られるC60を出発物質として、合理的かつ選択的な方法にてフラーレン骨格を拡張する手法の開発が求められている。 本研究では、開口フラーレンの開口部を足がかりとすることで拡張フラーレンの合成を試みた。すなわち、C60とトリアジン誘導体の熱反応により、8員環の開口フラーレンを合成した。この反応は、[4+2]付加環化、脱窒素、分子内[4+4]付加環化、retro[4+2]反応が一挙に進行したものである。これに対してフェニルマレイミドを反応させることによって、C65Nの拡張フラーレン骨格をもつ誘導体が合成できることを見い出した。この反応は、ラジカル経由で、複数の結合の組み替えが一挙に進行したものと考えられる。この化合物の構造は、1H & 13C NMR, IR, UV-vis, MS等のスペクトルの他、単結晶X線構造解析によって決定された。さらに、酸の存在下、この化合物はC64N骨格へと変化することも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
C60のフラーレン骨格を、C65NならびにC64Nという拡張フラーレンへと変換する手法の開発に成功した。これらの化合物では、フラーレン骨格に窒素原子が組み込まれており、これを足がかりとした更なる反応開発や物性探索が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
C60へのフラーレン骨格拡張反応の一般性を検証する。すなわち、C60へ2カ所の拡張を行うこと、ならびに、フラーレンC70へ適用することを検討する。さらに、フラーレン骨格に埋め込まれた窒素原子に由来する新しい反応や物性探索を行う。
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