Wudlらによる最初のかご型フラーレン誘導体の報告以来、様々なフラーレン誘導体が合成されてきた。ケージ開口型フラーレン誘導体の開口部は、オレフィン部位の反応性が高いため、多様な化学的手法により開口部の拡大(光化学反応、酸化など)、縮小(カルボニルカップリング、熱分解など)が可能である。このような構造変換法を用いて、いくつかの内包フラーレンやアザフラーレンが調製されている。一方、ケージ開口型フラーレン誘導体の化学反応により、開口部の官能基の配置が異なる構造異性体が得られることがあるが、多くの研究はその構造的特徴に着目し、反応性の差異にはあまり注目していない。このような類似構造をもつフラーレン誘導体の反応性を調べることは、新しいケージ構造や内包型誘導体を合成するために重要である。C60を官能基化すると、通常、構造異性体が得られる。しかし、ケージ開口型フラーレン誘導体の場合、その構造異性体間の反応性の違いはまだ不明である。ここでは、イミノ基の配置のみが逆になっている2つのケージオープンC60異性体の反応性を調べた。 まず、この2つの異性体のN-オキシドとの反応を調べたところ、同様に開口部が拡大した。次に、メタノールを求核剤とする反応を行った。その結果,イミノ基とカルボニル基の一方に渡環反応が起こり,それぞれ収率90%と6%で10員環と9員環の開口部が得られた。単結晶構造解析の結果、6員環または7員環の環が新たに形成された構造が確認された。DFT計算と熱安定性試験から、観察された違いは、6員環を含む化合物の方が他よりも熱安定性が高いことに起因すると考えられる。
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