5G無線通信システムの基地局用準ミリ波アンテナとして、広帯域、高利得と広角度のビーム走査が可能な基地局Massive(大規模) MIMOアンテナが求められているが,アンテナ間の電磁結合のため,これらの性能の達成が極めて困難である.そこで本研究では、Massive MIMOアンテナ素子間の電磁結合を低減することにより、広帯域,高利得,広角度スキャンが可能なMassive MIMOアレーアンテナ設計の要素技術を確立する目的で、研究を進めている。本年度では、主に3つの研究成果を挙げている。 1つ目は、マイクロ波、ミリ波用広帯域バンドパスフィルタの研究である。アレーアンテナの給電回路にバンドパスフィルタを実装することにより、素子間干渉を低減する要素技術の確立を図った。その成果として、meander-line 共振器、結合型マイクロストリップリング、結合型マイクロストリップスタブ、及び表面プラズモン・ポラリトンの4つの構造で、バンドパスフィルタの実現に成功している。 2つ目は、プラズモン・ポラリトンを用いたバンドパスフィルタの設計に関する研究である。マイクロ波とミリ波の帯域においては、コプレーナ導波路上のプラズモン・ポラリトンを用いたバンドパスフィルタの設計方法について提案と検討を行っている。 3つ目は小形、高効率のテラヘルツ吸収技術の研究である。T型スロット形状のグラフェンとその補対構造を設計し、それによる電波吸収効果を確認している。 以上の三つの研究成果は10編の雑誌論文にとりまとめられており、2020年度に公表されている。
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