カーボンニュートラルを目指し,地球温暖化の要因とされる二酸化炭素の排出量を減らし炭素資源として有効することが求められている中で,太陽エネルギーを用いて二酸化炭素を有用化合物に変換するための光触媒の開発研究が盛んにおこなわれている.本研究は,二酸化炭素還元による一酸化炭素の生成のための光触媒の活性を向上させるために有効である助触媒の高効率化を目指し,チタン酸塩光触媒に添加する新たな二元助触媒の開発を行うものである.本研究は特別研究員と共に2019年11月末から2021年11月まで行われた.2019年度の4か月の間には,二酸化炭素還元光触媒反応の評価のための実験環境を整え,チタン酸カルシウム光触媒を用いて二元系助触媒の開発に取り組み始め,2020年度には,二元助触媒の組み合わせや調製法の検討をおこない,学術論文として報告した.本年度(2021年度)は,これを継続して研究を続け,第2成分としてMn酸化物を用いた場合に,通常得られる酸化生成物である分子状酸素の代わりに,過酸化水素が得られることを見出した.光触媒を用いた水による二酸化炭素の還元反応で,二酸化炭素の還元生成物である一酸化炭素と水の参加生成物である過酸化水素が,同時に,それぞれ高選択的に,しかも定常的に生成されたのは知る限り世界で初めてである.この時の水溶液に炭酸水素ナトリウムを共存させることで得られた過酸化水素は水溶液中に安定に存在していた.これまでの報文でも,光触媒反応であるにもかかわらず,水素や一酸化炭素といった還元生成物は観測されても,酸化生成物である酸素が見られないことがしばしばあったが,過酸化水素ができていた可能性が示唆された.
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