原子層の欠陥修復を念頭に、さまざまな有機官能基を化学気相成長法を用いて成長した原子層半導体の単結晶に対して行った。前年度までにその有効性を明らかとしていたチオール基をもつ分子による修飾を種々の原子層に適用した試料について、極低温での分光実験をすすめたところ、修飾した分子と原子層の間で電子と正孔が分離した新たな励起状態に由来する発光ピークを観測することに成功した。励起状態の寿命は、通常の層内の励起子に比べて一桁程度長く、また原子層のバンド構造と分子軌道のアラインメントを反映して、複数種の発光ピークが存在することが明らかとなった。さらに、修飾にともなって、光電変換の応答性が改善されるなど、当初予期していなかっことを見出すことにも成功した。また、前年度てがけていたウイルスセンサーを、コロナウイルスの抗原に対して適用し、fg/mlオーダーの感度で検出可能であることも見出した。上記した成果についてはすでに原稿を完成し、論文に投稿する準備が整ったところである。
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