研究課題/領域番号 |
19F19391
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中原 健二 北海道大学, 農学研究院, 講師 (90315606)
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研究分担者 |
AKHTER MD. Shamim 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2019-11-08 – 2022-03-31
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キーワード | Atg8 / 葉緑体外包膜タンパク質 / カルモジュリン様タンパク質 / キュウリモザイクウイルス / 2bタンパク質 |
研究実績の概要 |
受け入れ研究者らは、これまでに植物のカルモジュリン様タンパク質(CML)が多くのウイルスがコードするRNAサイレンシング抑制タンパク質に結合することでウイルスの侵入を認識し、サリチル酸やオートファジーによる分解による防御機構を誘導するウイルス御機構の存在を明らかにした。これまでの研究で複数のCML、CML37-41およびCML43がキュウリモザイクウイルス感染時にウイルスがコードする毒性因子であるRNAサイレンシング抑制タンパク質2bに結合し侵入ウイルスの認識やオートファジーによるタンパク質の分解を介した防御に働いているのではないかと考えられる。そのメカニズムの解明のために研究を行った。まず、CMLが親和性を持つ2bタンパク質の領域を特定するために、2bの部分配列とCMLの親和性を酵母ツーハイブリッドで調べたところ、C末端領域に親和性がある可能性が示された。さらに意外にも、関連の研究で複数のCMLと結合性の内生タンパク質、葉緑体外包膜タンパク質と2bが直接結合することを見出した。また、2bがオートファジーの重要な実行因子であるAtg8と直接結合することも発見した。これらの結果から、CML37-41と葉緑体外包膜タンパク質、ウイルス2bおよびAtg8との相互作用を介して、オートファジーによるウイルス認識防御機構が働いている可能性が考えられ、今後の研究でその作用機序を明らかにしたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
受け入れ研究者らが行ってきたCMLとキュウリモザイクウイルス2bの相互作用やCMLによるオーファジーを介したキュウリモザイクウイルスに対する防御機構の解析には、ミッシングリンクとしてCMLや2bがどのような因子を介してオートファジーによる分解に導かれるのか分かっていなかった。今回、外国人特別研究員のアクタル博士の尽力により、2bが直接オートファジーの実行因子であるAtg8に直接結合すること、及び、2bがCMLと結合性の葉緑体外包膜タンパク質に直接結合することを見出し、CMLによるオートファジーを介したウイルス防御機構を司る因子やそれらを介した新たな作用機序モデルの立案およびその証明のために必要な研究方針を考えることが可能となり、分子メカニズムの解明のために研究を大きく発展させられると考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
今回、CML37-41と葉緑体外包膜タンパク質、ウイルス2bおよびAtg8との相互作用がオートファジーによるウイルス認識防御機構において重要な役割を果たしていると考えられたことから、これらの因子間の結合が協調的で3つ以上の分子で複合体を形成するのか、もしくは競合的であり、そのことの作用機序の背景メカニズムになっている可能性もあり、3因子もしくはそれ以上の因子間で、どのような相互作用をしているのか、各因子間の親和領域の解析に加えて酵母スリーハイブリッドおよびSplit Luciferaseコンプリメンテーション法により、複数因子間の相互作用の解析を進める予定である。さらに、CMLおよびウイルス2b結合性の葉緑体外包膜タンパク質の過剰発現およびノックアウトシロイヌナズナをゲノム編集CRISPR/Cas9法で作成し、ウイルス接種試験を行うことでウイルス防御機構における葉緑体外包膜タンパク質の役割を調べることを予定している。それが判明すれば、裏付けとなる遺伝学的な解析に加え、植物ホルモン系、防御シグナルや関連遺伝子の発現を解析し分子機構を明らかにする。
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