研究実績の概要 |
尿素の焼成速度を変化させて合成した形態特性の異なる窒化炭素には、導電性や光応答性、光触媒活性にも影響が及んでいた。これを踏まえて、光触媒活性のより高い多孔性窒化炭素に焦点を絞り、導電性高分子であるポリアニリンを媒介として、炭素量子ドットを修飾した。この窒化炭素・ポリアニリン・炭素量子ドットの三者複合体CN-PANI-CQDsでは、窒化炭素が主触媒であり、それに接合するポリアニリンは導体でHOMOが形成する価電子帯VBとLUMOが形成する伝導帯CBの間を電子が励起し、窒化炭素の励起電子が再結合することを回避するのに役立っていた。ciprofloxacin(CIP)の光分解反応では、主触媒である窒化炭素の光応答電子励起反応において、正孔(h+) および O2-ラジカルが主要なラジカルであることに変わりはないが、この複合体ではさらにポリアニリンの表面に分布する炭素量子ドットの表面で発生するO2-ラジカルがH+と反応しH2O2を生成し、電子を受け取ってOHラジカルもCIPの分解にかかわっていることが推定された。この複合体をCIPのほかimidacloprid, tetracycline, phenol, rhodamine B の光触媒分解にも適用し、いずれも10 mg/Lのこれらの有機物を110分以内に光分解した。CIPの光分解反応では、韓国Chungnam 大学の有機化学者との国際共同研究によって、反応中間体や生成物をLC-MSで同定し、複数の分解反応経路を明らかにした。さらにこれを粘土鉱物モンモリロナイトと複合化することにより、光触媒活性は増幅され、とくにFe3+を担持した粘土鉱物は単なる支持体としてではなく、異種材料の接合を介した励起電子の輸送にかかわり、新たな電子トラップレベルを形成することによって、結果的に主触媒の励起電子の再結合を防ぐ役割を果たしていることがわかった。
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