東京大学の水田において、2020年度に引き続いて、2021年度はジャポニカ品種およびインディカ品種を供試して水稲試験研究を実施した。これまでの研究(複数の作物種における窒素利用効率向上のための施肥管理と窒素栄養診断技術の開発)を、稲作における気候変動適応研究に発展させるため、効率的な施肥管理と灌漑利用効率向上の両立、特に施肥節約と灌漑節約のトレードオフに焦点を当てた。水稲試験における生育期間中、定期的に植物体サンプルを採取し、1000点程度のサンプル調製を行い、全サンプルで窒素分析を行った。そして、水×窒素施肥の交互作用に関する水稲生理生態の解析を進め、異なる灌漑条件において窒素希釈カーブを作成した。そのうえで、窒素希釈カーブを中心とする生理生態メカニズムに照らして水稲品種の窒素利用効率の土壌水分応答についてデータ解析を進めた。これらの素データをインプットとして、作物モデルのパラメータ決定を進め、水条件や気象条件に対する窒素希釈カーブの応答についてシミュレーション解析を検討した。 また、同時並行で、作物栽培における施肥管理の合理化(施肥利用効率の向上)に関する近年の研究報告に関して文献レビューを進め、地上部乾物重―地上部植物体窒素濃度の関係からなる窒素希釈カーブをもとに窒素栄養診断を進めるコンセプトについて必要なインプット情報を整理した(総説として取りまとめて国際誌に投稿、採択済み)。さらに、国際稲研究所と共同で進めた水稲多系統収量評価試験のデータ解析と論文取りまとめを進め、論文投稿まで行った(査読中)。
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